夏の奇行
それは大学2年の夏のことでした。
実家に帰省していた私は、1日に数時間の簡単なアルバイトを頼まれ、後は本を読んだり昼寝をしたり、気楽な日々を送っていました。
しかし、最初は良かったのですが、あまりにも単調な毎日が続き、ついには退屈でおかしくなりそうな状態になっていました。見渡す景色は山ばかり、セミは渾身の力を振り絞って私の脳に向かって鳴き続け、若かった私はエネルギーをどこへもっていっていいかわからない日々を送っていました。
そんなある日、あまりにも退屈すぎたので、ふとあることを思いつきました。(私はよくこういう状態になります)
「海水浴に行こう」
しかし、友達は誰も帰省していなく一緒に出かけてくれる人がいません。私は急に思い立って母親の軽自動車で比較的近くの海まで一人で海水浴へ行くことにしました。その時点ではそれが奇行だとはあまり気がついていませんでした。
とりあえず水着やゴーグル、浮き袋やタオルなど子供の頃の海水浴セットがまだ存在していたので、それを車に積んで日本海の神崎海水浴場へ行きました。
着いてみると海水浴場は大変な日照りで、平日にもかかわらずたくさんの人で賑わっていました。私は一人で水着に着替え、浜茶屋をかりて少し泳いでみました。やっぱり海は気持ちいいと思いました。せっかく来たのだからと思って浮き袋に空気を入れたり、浜茶屋でおでんを食べたりしました。そしておまけに、一人ではすることがないので砂浜に穴を掘って、一人で埋まってみたりしました。
しかしふと我に返ってみるとなんかおかしい。一人で海水浴へ来て、浮き袋で浮かんだり、一人で砂に埋まっているやつなど聞いたことがない。
急に妙な気持ちになり、その後なんか少し打ちひしがれたような気分になって、車で帰路につきました。
別に誰かに迷惑をかけているわけでもないのですが、世の中には一人でやっていいことと悪いことがあるように思いました。
今でも思い出すと変な気持ちになります。
夏の暑さと、退屈さがさせた私の奇行でした。