餃子とビール
大学を卒業して、京都のデザイン会社で働いていた頃のお話です。
一度だけ、一人で中華料理屋へ入って、ビールと餃子を注文したことがあります。
なぜ一度だけなのかと申しますと、わたしは基本的にアルコールを受け付けない体質です。なので、ふつうのビジネスマンがよくやるように、会社帰りにビールを一杯飲んで帰るということはあり得ないのです。
その日も、一日の仕事が終わり、いつものように充実感のある心地よい疲労感に包まれながら、家路を辿っておりました。
見慣れた街角の中華料理店の前にさしかかると、なんとなく空腹も少し感じ、餃子とビールというイメージが浮かんできました。
無性に餃子が食べたくなり、冷たいビールが無性に飲みたくなりました。勿論アルコールが駄目な事を忘れているわけではないのですが、その日に限って、なんか飲めそうな気がしたのです。
早速お店に入ると案外空いていて、カウンターではなく4人がけのテーブルに一人で腰掛けました。そして中華料理屋のオヤジに、餃子一人前と、ビールを注文しました。
ビールは中瓶でいいですか?
と聞かれたので、
はい
と答え、やがて美味しそうな餃子とよく冷えたビールとコップが出てきました。
餃子のうまさと、よく冷えたたビールのノドごしは最高でした。
しかし、数口ビールを飲んだだけですが、私の心臓は鼓動を早め、ドクドク大きく強く打ちはじめました。
当たり前ですが、この日に限っての例外はなく、やはりアルコールがガンガンまわっつてきました。
顔が真っ赤になり、周りがぐらぐら揺れるようになっています。アルコールが体全体に強烈にまわってきて、のぼせ上がるようになってきました。
私は急いで餃子だけを食べて、お勘定に向かいました。
なんとか支払いはできたのですが、わたしは真っ赤な顔をして、店を出ました。
お店の人はキョトンとした表情で、私を見ているようでした。(そりゃそうですよね)
わたしはそのあと朦朧とした意識の中電車に乗って、大酒飲みが酔っ払ったようにして家に帰りました。