漢字書き取り機の発明
小学生の頃、私は漢字書き取りが大変嫌いでした。学校から帰ると夕飯までに宿題を済ませるようにと、当時幼稚園の先生をしていた母親にきつく言われていたので、学校から帰るといやいや、ほんとうにいやいや宿題をしていました。
多分小学2年生だったと思います。そんなある日、何気なく机の前で小さくなった鉛筆を握っていて、あることに思いついたのです。
「鉛筆をセロテープで2本、マスに合わせて固定すれば一度に倍の漢字書き取りが出来る」ということです。そしてそのアイデアはさらに膨らみ4本の小さい鉛筆をセロテープでぐるぐる巻きにして一度に4文字同時に漢字書き取りが出来る機械(?)を発明したのです。やった!これでらくらく漢字書き取りが出来る!と有頂天です。
その日は、ノートのマスに合わせた4本の鉛筆で同時に書いて、楽々書き取りを済ませました。(実際には、ちゃんと漢字書き取りをしたほうが、よっぽど早かったと思います。また、そもそも何で漢字書き取りというの宿題が出されているのかが、全くわかっていない)
その夜、当時厳しかった公務員の父は、いつもの通り、私の宿題をわざわざランドセルからだして、やっているかどうかチェックし始めました。たいがい、いつも何かしら問題が発覚し、叱られるのですが、その日は私は、自信満々で、その検閲を受け入れようとしていました。
しかし、父親が漢字書き取りの国語のノートを見た途端、表情がみるみるうちに険しくなっていくのがわかりました。(このシーンははっきり今でも覚えています)
「なんやこれは!」「漢字書き取りやったで!」
問題はやったかどうかでははなかったのです。小学二年生では完璧だと思っていたことも、やはり大人から見ればすぐに見抜かれてしまいます。なんと4つの文字が全く同じ形をしていて、不正を行なったのが一目瞭然だったのです。当然その夜は、出て行けだの、蔵に入っとけだの大変な叱られようでした。大発明だと思ったのですが。
こんな事を繰り返しながら、なんとか悪いこともせず、普通の大人になりました。「お父様ありがとう」ですね。