何年か前の暮れのことでした。私はひどい風邪をひいて、やっと歩き回れるくらいに回復した頃でした。
何の理由だったか忘れましたが家内に
「ダンボールが沢山いるので、集めてくれる？」
と頼まれました。
私は「そんなことお安いご用！」と、日頃の汚名を返上すべく張り切ってスーパーにダンボール箱をもらいに行きました。

暮れのことだったので、スーパーはびっくりするくらい混んでいました。
私はスーパーのおばさんに
「ダンボールありますか？」
と尋ねました。普通ならいやな顔をせずにダンボール箱くらい分けてくれるのですが、その日にかぎって
なぜかいやな顔をして、ダンボールの積み上げてあるスペースを指示されました。
「あれ！暮で忙しいからかな？」
とおばさんの不審そうな表情にも、特に気に留めずにダンボールをできるだけたくさん抱えて３往復くらいしました。

全部車に積んで、もう一度スーパーに戻って挨拶だけしようとした時、ふと我に帰りました。

その時の私の格好は、病み上がりのため、髪の毛はボサボサ（長髪）ヒゲは伸び放題、風呂にも入っていなかったので少し臭かったのかもしれません。服装もヨレヨレのコートをきていました。
「あっ！」
きっとスーパーのおばさんは私を「ダンバールを集めて暮らしている人」だと思ったのでしょう。いやまたはこのダンボールで暖かくして今晩駅か公園で寝るのだと思われたのでしょう。（きっと間違いないと思います。）

私は急いで車で家に帰りました。

こちら側から見える風景はいつもと同じでも、見られている側の「見かけ」ってとっても大事なことをいい年になって初めて知りました。